汽車旅の記憶(10) 嵯峨野観光鉄道【2014年8月】

 嵯峨野観光鉄道は、1991年4月、新線に切り替えられて廃止となった山陰本線の旧線部分を「再活用」する形で開業しました。旧線は風光明媚な保津峡に沿う単線でしたが、新線は複線になり、トンネルと橋梁で一気に通り抜けます。交通路としての機能性は抜群ですが、それと引き替えに「汽車旅の風情」は薄れてしまったといわざるを得ません。嵯峨野観光鉄道は、社名の通り、その「風情」の部分を観光資源として「再活用」したというわけです。
 私自身は旧線時代の山陰本線に乗っており、また途中の保津峡駅付近で列車撮影をしたこともあるため、いうなれば「もとの姿」を知っていることになります(新線にも乗っています)。そんなわけで嵯峨野観光鉄道に「新規開業路線」としての魅力を今一つ感じることができず、実際に乗ったのは、開業から20年以上を経た2014年8月でした。
 もちろん、行けばすばらしい景色との再会に感激し、また「近代化された山陰本線を仰ぎ見るポイント」もあって、大満足の「汽車旅」となりました。